2020年度同志社ラグビー部 裏方特集
吉田治寛
「1番の理解者として」

かつて同志社ラグビー部の選手の一員として体を張ったプレーを見せた吉田は、今では学生コーチとしてグラウンドに立つ。誰よりも選手を理解し、FWのユニットでメニューを考え、一緒に練習を行っている。
去年の6月、小学1年から始めた長いラグビー人生に区切りをつけた。「選手よりもコーチの方がチームのためになるかなと思ったので」。自ら学生コーチになることを決断する。なかなかトップチームで試合に出ることができなかった時、去年の監督やコーチに勧められたことがきっかけだ。悩みに悩んで出した結論ではあったが、チームに貢献することを1番に考え、学生コーチとして新たなラグビー人生を歩み始めた。
学生コーチは何と言っても社会人コーチと比べて選手との距離が近い。同年代であるからこそ分かり合える肉体的な苦痛や悩みがある。しかし、元々選手である吉田は実際にその痛みや悩みを経験していたからこそ、選手に厳しいメニューを提案することに葛藤があったと言う。それでも選手目線で考えることのできる学生コーチならではの距離感を武器に現在まで役を全うしてきた。こうした苦悩を理解し合えることはより良いチームの構築に繋がっている。
選手から学生コーチになったことで気づきもあった。選手時代にはただ練習をこなすことが多かったが、練習メニューを考える立場になった今、いかにコーチ陣が練習に目的をもって行っているのかを改めて考えさせられている。現在は選手の成長を実感すると共に自身のラグビーの理解度の成長も確信してきた。社会人コーチとは一味違う学生コーチは、選手にとって大きな存在に違いない。
4年間の集大成に向けて「今まで通り選手と良い距離感を保ちながらチームのことを考えて携われるようにしていきたい」と意気込む。役目が変わっても同じ志で選手と共に戦う。(松井麻衣)

◯プロフィール
吉田治寛(よした・ちひろ)
政策学部4年生
富山県高岡第一高校出身
学生コーチ
山中一輝
「今できることを」

同志社の熱きラガーマンたちを全力で支える1人のトレーナーがいる。山中一輝だ。
ラグビーとは思わぬ形で出会った。中学ではサッカー部に入る予定だったが、セレクションに落ちてしまう。そこで、いとこの影響もありラグビーを始めることにした。当初は激しいコンタクトプレーに抵抗を感じていたものの、仲間との絆や互いを尊重し合う精神に魅了され、次第にラグビーの楽しさに引き込まれていく。
高校時代はロックとして試合に出場していた。しかし、当時から怪我に見舞われることが多い日々だった。大学でも大好きなラグビーを続ける道を選んだが、2年生の冬から脳震盪を4回起こし、3年生の秋、ファーストジャージを身にまとった試合を最後に選手としての一線を退いた。今では選手の回復や試合復帰を目指す頼もしいトレーナーとして、ラグビー部の育成に尽力している。
普段はリハビリのサポートやメニュー作りを行っている。苦しい練習メニューに不満を漏らす選手を前に、苦しさや悔しさを感じることもあったが、怪我がちだった苦い経験があったからこそ選手としっかりと向き合い、復帰へと導く手助けができた。再びフィールドに立ち活躍する選手たちの姿は、彼を動かす原動力になっている。
選手一人一人の目線に合わせ、自分にできることは何かを探る中で「どんな時も相手の立場で物事を考えられるような人間になりたい」という意識も芽生えたという。ラストイヤーを迎えた今も彼の向上心はずっと変わらない。
「公式戦で激しいコンタクトが増えていく中でも全面的に選手をサポートし、復帰への手助けをしていきたい」。選手権に向けて、引き続きチームの快進撃を裏で支える。選手にとってもチームにとっても頼りになる縁の下の力持ちだ。(濱田夏実)

◯プロフィール
山中一輝(やまなか・かずき)
政策学部4年生
神奈川県・桐蔭学園高校出身
トレーナー