昨年、選手権出場を逃し、悔しさに嘆いた紺グレ戦士たち。日本一には、程遠いその結果にファンも落胆の色を隠すことが出来なかった。しかし今シーズンに入ると、新監督の就任、強力な新戦力の加入など明るい話題が次々に舞い込む。その話題性から今年のチームに期待がかかるのは当然のことであった。日本一への重圧が重くのしかかる。そんなチームの主将に選ばれたのが、秋山哲平(スポ4)だった。
ラグビー界の超名門校である東福岡高校出身の彼は、「風通しのよいチーム」という言葉をよく口にする。全員が自由に意見を言えるチームということだ。秋山自身、後輩や同期によく声をかける。そしてポジションや学年ごとのミーティングを多く設け、勝利に向けてチームの結束力を高めてきた。
「今年はここ数年で一番練習している」(山神監督)。話し合いだけでなく、たゆまぬ努力も忘れてはいない。秋山本人も今年、NO8からHOへとコンバートし、また今までとは違う要素が求められてきた。しかし、持ち前の体の強さと接点における強さは、HOというポジションでも十二分に発揮され、スクラムは全国でも圧倒できるレベルに。そして突破力が前で活かされるようになり、秋山はチームに勢いをつける存在となった。

103代主将を務める秋山は今年からHOにコンバート
待ちに待った開幕戦。むかえた初戦は強敵・立命館。アグレッシブディフェンスを持ち味に、前へ前へというディフェンスで同志社の攻撃に対して喰ってかかる。しかし先手を取ったのは同志社。開始3分、相手キックに対し1年生の松井が好チャージを見せる。そのこぼれたボールに詰めていたのはキャプテンの秋山だった。先制のトライ。頼れる男のトライはチームを活気づけた。そしてその後も秋山は、勢いのあるタックル、接点での強さを見せつけ、ターンオーバーを見せるなど、チームの流れを作ってみせた。得点14-7でむかえた前半25分にも、秋山が再びトライ。相手のミスから流れに乗った同志社が敵陣深くまで攻め入ると、相手ディフェンスが乱れ始める。そこにいち早く寄り、ボールを手にしたのが秋山であった。最後は秋山が一人で敵を振り切り、インゴールへとねじ込んだ。トライ後、雄叫びを上げた秋山。今大会にかける想いが表れた瞬間であった。

同志社の今リーグ開幕トライを決め、指を天に突き上げた
試合には敗れたものの、個人としては2トライを挙げた秋山。しかしそこに慢心はない。「(2トライは)みんながつないだボールが自分にまわってきただけ。評価には値しない」(秋山)。ひたむきな姿勢で誰よりも強さを求める。チームの勝利のために。そして紺グレ戦士は進んでいく。前へ前へと――。その彼らの先頭には主将・秋山の姿がある。(樋向健太郎)