11月4日、天理親里球技場(奈良県)にて行われた2019ムロオ関西大学ラグビーAリーグ第4節、対関学大。7-14で前半を終えるも後半に逆転、24-21で勝利し開幕4連勝となった。
前半から関学大のパワフルなFWとスピード感で溢れるBKに終始主導権を奪われた。それでも後半、土壇場で同点に追いつき、最後はFB原田(心理4)のペナルティゴールを決め、関西優勝に向けて見事白星を執念で掴み取った。

ノーサイドの瞬間
悪夢が脳裏を過ぎった。昨年の第3節で関学大にまさかの終了間際で同点に追いつかれ、その後決勝弾を浴びた。約1年の月日が過ぎたが、この日も不穏な空気が会場を包み込んでいた。
先に得点を動かしたのは関学大だった。自陣での関学大ラインアウトから左サイドに展開される。22m付近でWTB山口(社2)がタックルで止めるも、キックパスを右サイドの防御網の裏へと飛ばし、難なく捕球されトライを決められる(0-7)。
反撃に出たい同志社、FWを中心にラインブレイクを試みるもタックルを強みとする関学大のディフェンスにぐいぐい押し返される。またペナルティも続き、全く敵陣でプレーをさせてもらえない。
前半20分までボール支配率は30%弱と、関学大がゲームを支配していた。しかし粘り強く攻め続けると関学大のペナルティが増え始める。同21分、関学大のノックオンからスクラムを組む。相手の武器であるスクラムを同志社が粉砕し、ゴール前まで侵入。2度モールを形成しトライを狙いにいくが、手堅い関学大のゴール前ディフェンスに悪戦苦闘する。しかし再びペナルティを犯した関学大に対し、同志社はスクラムを選択。出たボールをNO.8斉藤(社3)が右サイドへ持ち出しトライ(7-7)。約6分間続いた連続攻撃を得点に結びつけた。

今季初出場、初トライとなった斉藤
だが同32分、SO田村(スポ2)のパスをインターセプトされ、約40mの独走トライを許し再び7点差に。前半終了間際、敵陣インゴール前にて同志社は再び得点のチャンスを作り出す。関学大がスクラムでペナルティを犯すも、同志社は自信のあるスクラムで貪欲にトライを狙いにいった。フェーズを重ね、FW戦に持ち込み、トライが生まれると思われた。だがノットロールアウェイでチャンス活かすことができなかった。
7-14で迎えた後半。開始6分、関学大はBKを軸に右へ、左へと素早いパスワークで同志社は揺さぶられると、生まれたスペースへ走り込まれトライを許す(7-21)。2トライ差のまま試合は続くが、お互いペナルティが続き、攻めあぐねる。
遂に同志社のトライが見られた。敵陣22mのマイボールラインアウトから右サイドへボールを飛ばす。堀部から原田が受けると4人を引きつけながらゲイン、再び右サイドから走り込んできたFL堀部(社4)がインゴールへ飛び込んだ(14-21)。

インゴールへ走る堀部
このトライで同志社は勢いを一気に加速させた。SH人羅(社3)とSO桑山(政策3)の3年生ハーフバックコンビを軸に、アタックテンポのギアを徐々に上昇させる。同23分、自陣22m付近で桑山がハイパントを捕球すると、自らの足で10mまでゲイン。原田や山口のランで好機を生み出した。

キレのあるランでチームに得点をもたらした山口
また途中出場の奥田(文情4)がボールを幾度となくパワフルなボールキャリーを見せる。ターンオーバーを許すも、蹴り返されたボールをWTB山本(商4)が桑山に繋ぎ、関学大防御網の裏のスペースへ蹴り込む。CTB和田(文情2)が相手BKとボール争奪レースを繰り広げるが、惜しくもドロップアウト。確実に同志社の流れが傾いていた。
同33分、関学大のノックオンにより敵陣にてマイボールスクラムになる。スクラムから出たボールを桑山へ配球すると、美しいトライが生まれた。「負けていたので、思い切って仕掛けた」(桑山)。第3節でも見せた、左サイドへのキックパスにタッチライン際を走る山口が反応。ボールをキャッチすると、2人交わしてインゴールへと到達させた。

同点トライに喜ぶ 左から桑山、山口、和田
原田のコンバージョンも決まり、遂に同点(21-21)。同志社陣営のボルテージは最高潮に達していた。関学大のキックオフで再開されるも、波に乗っていた同志社はアタックを継続させ、じわじわと敵陣へと侵入。FW陣が着実にボールをインゴールへと近づける。すると焦った関学大がオフサイド。客席からは「ショット!」と叫ばれていた。「メンバー、ベンチ含めて全員がペナルティーショットと言っている声が聞こえて、みんなから信頼してもらっているのだなと肌で感じた」(原田)。ゴールまで約30m。大きく助走を取り、右足から放たれた豪快なショットは、空高く飛びながらもゴールポストを通過。審判2人が手を挙げたと共に、スコアボードには24の数字が刻まれた。

原田のキックは4発すべて成功
しかし試合は終わっていない。関学大も意地を見せ、最後の最後まで攻め続ける。ロスタイムに入り、自陣22~5m付近でまさのノットロールアウェイ。そこで関学大はペナルティゴールで同点にするのではなく、スクラムを選択。トライを奪い、逆転勝利を狙っていた。お互い余力を振り絞った渾身のスクラムが組まれると、ボールを拾った関学大が左サイドからが飛び出してきた。だが同志社はしっかりと抑え、ラックから山口がボールを奪いターンオーバーに成功。最後は桑山が左サイドにボールを蹴り飛ばし、3季ぶりに関学大から白星を奪った。

試合終了後に喜ぶ同志社ラグビー部
「我慢比べに選手たちが粘り勝ちをした」(萩井監督)。リザーブの選手がスタメンに負けないインパクトを見せつけた。また「勝ちきる」面で同志社は大いに成長している。昨年までは土壇場での失点で逆転負けを喫する展開が多く見られた。だが今年は第2節の近大戦でも見られように勝負強く、勝ちきることができている。「目の前のプレーに忠実にできたこと」(主務・岩本・スポ4)が勝ちきれた要因だろう。

関学大の武器であるスクラムを幾度も粉砕した
次戦はライバルと言える京産大との一戦だ。春は1点差でまさかの敗北。「どのような状況でも常にチャレンジャー精神を忘れず、80分間戦い続ける」(山本)。5連勝、そして3年ぶり選手権出場に向け、山本紺グレがリベンジマッチを必ず制する。【文責・川田翼、撮影・上野孝輔、柳ヶ瀬達彦】
【コメント一覧】
萩井監督

――本試合の勝利について
リザーブの選手含めてチーム全員で勝ち取れた勝利だと思います。今日出ていないメンバーもJr.メンバーもCメンバーも全員がこの試合のためにいい形で勝ってきてくれまし
たので、選手層の厚さが最後の最後の結果に繋がったのではないかと思います。
――最後スクラムの優位性が活きたと思いましたがその点について
時間をかけて学生たちがやってきた部分だったので、自分たちを信じてやれるプレーの場面だったと思います。
――14点差 時にどういった指示をかけましたか
向こうの足が止まっている状況も見受けられたので、積極的にアタックをしかけていくように声かけをしました。代わりに出た選手も懸命に動いてくれたので最後の最後の勝利に繋がったと思います。
――前半戦、FWで取り切れなかったのですが
本来であれば取っとくべきところで取れなかった場面が、両校で見られた前半戦でした。お互いにミスがある中で、最後少しだけチャンスがこちらに何かが転がり込んでくれました。チャンスの場面で決めきる力が試された試合だったと思います。
――関学戦3年ぶりの勝利となりましたが、意識していたか
個人的には意識していました。ただし、学生たちは特にそういう話をする訳ではなく、4年生を中心に勝負を仕掛けていた印象です。今年の学年として勝負をして、最後に結果が付いてきて良かったです。
――休戦期間で修正したところ
後半戦に向けてコンタクトの強度が高いチームが続いてくるのでしっかりと耐えられるような練習を増やしていきました。
――後半、リザーブ投入の狙いについて
関学はハードな攻撃をしてくるので、前半の消耗が厳しくなるだろうと思っていました。同志社は特にリザーブにはインパクトを与えられる選手が揃っているので、彼らを投入することで向こうを上回ることが出来ると思っていました。とはいえ、後半勝負ということではなく、我慢比べに選手たちが粘り勝ちをした印象です。
――終盤にキャプテンが交代しましたが、その意図とは
コンディションがあまり良くなかったので、次にいる良い選手を投入しました。交代後も、ベンチで積極的に声かけを行ってくれていました。
――今後の意気込み
我々は先がどうこうよりも一戦一戦の勝負になると考えています。今日が良い形で終わることが出来たので、流れを切らすことなく次の試合に向けて最高の準備をして挑みたいと思います。
主将・山本雄貴(商4)

――本試合前に意識していたこと
ワールドカップ期間を挟んでの後半戦の初戦ということもあり、この休戦期間でどれだけ成長できるのかを意識していました。チーム全員でハードワークを行い、昨年敗北した相手である関学大に対してまずは勝利収めて良い流れに持って行こうと思っていました。
――昨年とは一変した試合展開となりましたが
どのような力の差があるか分からない状況でも挑戦者の心を忘れず、先輩たちのリベンジもかけて挑んだすごく意味のある試合でした。
――前半はハンドリングエラーなどミスが目立ちましたが、どのように修正を
ボールキープの場面で前半はミスがあったので、自分たちのボールをしっかりキープすることを心がけました。それが、自分たちに訪れたチャンスを掴むことに繋がると信じてプレーしました。結果として最後の大変な状況で、ボールキープをし続けることで守り切れたので良かったです。
――14点差になった時の心境
以前の同志社は、あのような状況に陥った時にそのまま持ち直すことが出来ていなかったと思います。そこで、絶対に勝つという強い信念を持って点差はあるけれどプレーを切らさないように全員で声を掛け合って踏ん張りました。
――終盤に交代について
確かに緊張はしましたが、冷静に落ち着いてチームを信じて見守っていました。交代で入ったメンバーも力強いメンバーだったので、その点では安心していました。
――自身の復帰について
この関学戦にフォーカスして、休戦期間に行われた定期戦に出場しませんでした。今回、復帰戦でしたが今日の自分は役不足で、全く貢献できていなかったと自分自身は感じています。特にフィフティーフィフティーのハイボールキャッチの場面で取り切れなかったことが、自分の力量不足が露呈した瞬間でした。そこで、チームに流れを持って行ける様なプレーを出せないことが自分の弱点だと思いました。そういった中で、対面のウィングの原田が活躍していたことに対して悔しさもあります。一プレーヤーとしてはまだまだチームに貢献できていないのですが、点差が付いても全員があきらめることなく前進できる声かけを80分間一貫して行いました。そういった面では貢献できたと思います。
――ワールドカップも含めて得たものや、実際に感じたこと
日本代表の勝利を見て、本当にチーム全員がラグビーというスポーツをやっていて良かったと感じていると思います。もう一つは、私たちの使命として日本で起こったラグビーブームを日本代表からバトンを受け取ったと思って切らしてはいけないということです。大学ラグビーを盛り上げてラグビーが日本でもメジャースポーツになれば良いなと思います。
――関学大に3年ぶりの勝利となりましたが
負けている相手なので、常に自分たちがチャレンジャーという意識を持っていました。どのような状況においても積極的なプレーを心がけました。
――ここまで全勝で来ていますが、次戦への意気込み
この勝利を活かして、またさらにチーム一丸となって進んで行きたいと思います。戦術面においてはこれから練っていくことになると思うのですが、マインド的には昨年逆転敗けを喫している相手なのでどのような状況でも常にチャレンジャー精神を忘れずに80分間戦い続けたいです。
主務・岩本海斗(スポ4)

――関学戦への準備
どの期間を準備と捉えるかは微妙なところですが、1ヶ月半空いた中でもう一回開幕戦の雰囲気が出るっていう感じだったので、マインドセットしました。常にファンブルボールとか五分五分のボールが自分の所に来るようにというMHGUっていう作戦を立てていました。精神的な面でもそうですし、ラグビーの戦術で、怪我人とか出ていますが、誰が出ても勝てるようにという努力をする準備はしたと思います。
――後半でリザーブメンバーを投入してから、試合テンポが変わったと思うが後半を振り返って
相手も後半メンバーを変えてきたと思いますが、その分メンバー層の厚さっていうところで今回その差が大きく出たのかなと思います。後半テンポが出たところも相手のミスボールなど、同志社のファンブルボールが全部いい方に回ってきた気もしたので、そのようなで運の良さも出たのかなという気がします。
――前半より後半の失点が減ったが
前半同志社のミスがすごく目立ちました。特にペナルティを多く取られたというのは、修正しきれない部分だったので、そこをハーフタイムで修正できたと考えると後半の失点の少なさにつながったのかなと思います。
――ずばり勝因は
目の前のプレーに忠実にできたことかなと思います。前の3試合だと、どこか気が抜けた所でミスが起きるなど、トライを取られることがあったのですが、それが今回あまりなかったです。
――次戦に向けて
合間が少し短いので、なるべくレストを兼ねながら調整していくのは尚更ですが、僕自身はそれをできる環境を整えていくということをしていきたいと思います。
HO奥田啓太(文情4)

――本試合の勝因
スキル云々もあると思いますが、まずは全員があきらめることなく戦い続けたことが一番の勝因だと思います。
――前半、近場での攻撃で関学大にたいし苦戦していたことに関して
試合の入りから、選手全員の動きが硬く積極的に攻めることが出来ていない印象を受けました。ベンチからそういった光景を見ていたので、自分が試合に入ったら流れを変えてやろうと思っていました。具体的なアプローチとして、相手に対し五分五分でなく上回れるように攻めることを心がけました。
――立ち上がりについて
入りに関しては、悪く無かったと思います。ただ、関学との接点の場面で流れを掴みきることが出来ず、安定しなかったように感じました。
――春から比べて互いにレベルアップを感じた点
自分のポジション的に、スクラムの場面で感じたことが多かったです。春の時点では同志社が終始優勢で押し負けることはなかったのですが、夏に行った合同練習にて押される場面が出てきて、そこが自分たちの意識が変わるきっかけとなりました。スクラムの部分では、互いに相乗効果で組むたびに強化されている印象を受けました。
――今日のアタックについて意識していた点
一番は仕掛けるということを意識していました。受け身にならないことを一番に考えて、積極的に当たりに行きました。
――現在の心境と、次戦に向けて
今は、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。京産戦まで時間があまりないのですが、本試合で見えた課題をきちんと修正して次戦に挑みたいと思います。
FB原田健司(心理4)

――前半、後半で感じた雰囲気の違い
前半の中でも、同志社の流れの時と関学大の流れの場面とどちらも見られました。関学大の流れ場面で我慢し続けることが出来たので、前半戦をロースコアで折り返すことが出来たと思います。前半戦でも発揮した集中力が後半戦に入っても活かすことができて、それが結果として勝利に繋がったと思います。
――前半戦、近場の攻撃で苦戦したことについて
同志社のチャンスの場面で、関学大が集中力をもってトライを取らせない粘りを感じた瞬間でした。そういった部分においては、前半戦の最後に関学大の強みが出来たと思います。ここ一番で守り切る力が、春から比べて関学大に対してレベルアップを感じた点とも言えます。
――休戦期間を経て、実戦で感じた同志社のレベルアップ
明大との定期戦も含めて、結構点数を取られて負ける試合か、点数を取られた中でもなんとか取りきって勝つというような試合展開が多かった印象がありました。ただし、本試合ではいつもだったら取られる場面を全員で守り切ることで、流れを引き寄せることが出来たのでそういった点でレベルアップを感じることが出来ました。自発的に挽回することが出来たことが、本試合での一番の収穫だと言えます。
――逆転となったペナルティーショット時の心境
メンバー、ベンチ含めて全員がペナルティーショットと言っている声が聞こえて、みんなから信頼してもらっているのだなと肌で感じました。残り時間を聞いて、時間があったので冷静に良いイメージを持って蹴ることが出来ました。
――本試合で挙げられる修正点
反省点としては、もっと点数を決められた試合だったということです。取りきる力、ボールを持って前に進む力をもっと強化することが出来たらもっと楽にアタックが出来てさらに良い試合運びが出来ると思いました。
――次戦に向けて
本試合を受けて選手一人一人がそれぞれにレベルアップを感じた点があったと思うので次の試合でも、先手を心がけて80分間自分たちの試合を貫き勝利を掴み取りたいです。
SH人羅奎太郎(社3)

――勝因は
全員が勝負所で自分達のやることをしっかり徹底できたので、そこが勝因かなと思います。
――後半でテンポが上がったが、意識していたことは
ポイントに早く寄るっていうのと、ブレイクダウン周辺のFWへのオーガナイズを徹底してやりました。
――関学大の春からのレベルアップについて
春は怪我人がいてメンバーが欠けている部分があったのですが、秋に調整してきていました。それは予想ができていて、そこの部分が大きかったかなと思います。
――次戦に向けて
まだ後半戦始まったばかりなので、最後まで気緩めずしっかり頑張ります。
SO桑山太一(政策3)

――後半から起用されたことについて
前半うまく行ってなかったので、リザーブから流れ変えなきゃいけないと思い、本気でプレーしました。
――積極的なプレーが多々見られたが
負けていたので、思い切って仕掛けるしかないと思っていました。
――司令塔としてどのような役割を意識していたか
まず、得点を取ることを一番に意識しました。そのために、FWに今までやってきたことを指示出しました。
――どのような指示を
スペースにボール運ぶことを今まで練習してきたので、それができたと思います。
――今日の勝因について
ディフェンスで相手に流れが行っていましたが、しっかり我慢して守り切り自分たちの流れに持ってこられたことが勝因だと思います。
――次戦に向けて
勝つことは勿論ですが、今自分はリザーブなのでいいプレーしてしっかりアピールしてスタメンにあがれるように頑張りたいと思います。
【スターティングメンバー】
1.田中翔(経4)
2.橋本一真(商4)
3.文裕徹(法3)
4.松野泰樹(政策4)
5.平澤輝龍(神4)
6.弓削周翼(社4)
7.堀部直壮(社4)
8.斉藤響(社3)
9.人羅奎太郞(社3)
10.田村魁世(スポ2)
11.山本雄貴(商4)
12.和田悠一郞(文情2)
13.谷川司(スポ2)
14.山口楓斗(社2)
15.原田健司(心理4)