8月23日、津別ラグビー場(北海道)にて行われた夏季合宿強化試合対筑波大。合宿の集大成を示す最後の試合で同志社は序盤の失点が尾を引き、12-54で敗れた。
課題は一つずつ解決していく。今回、同志社が焦点を当てたのは「FWのセットプレーへのこだわり」だった。「春シーズンが終わってから、この合宿を通じても、(セットプレーは)課題になってた部分。時間を割いてやってきた。試合の結果的には負けましたが、部分的なスクラム・モールなど弱点とされてきた部分に関しては手応えがあった」(萩井監督)。そしてまた、主将・野中(スポ4)も、この日初のA戦先発出場を果たしたPR中村海輝(経2)も、同じく手応えを感じていた。確実にレベルは上がっている。主将は試合後、自信を持って語ってくれた。

互角に競ったスクラム

手応えを感じていたモール

ボールを投げ入れる平川(法3)
試合は両者拮抗していた。得点こそ筑波大に取られたが、決して圧倒された試合ではなかった。「FWがホットゾーンで受けてるのでそこで乗られて、順目に帰れなくて、ディフェンス余られて、BKは流すディフェンスをして…そこでまた乗られて、ディフェンスはまた遅れて…の繰り返し。上がれる場面で上がれる選手が少なくて、タックルする瞬間にスピードをあげれてないので、結局そこで受けて乗られてっていうのが全て原因」(野中)。ポイントサイドに食い込まれて、順目に守りたいところをできなかった。また、ディフェンスのミスマッチで簡単に突破される失点が目立った。

失点後の同志社
失点の要因は、「(スクラムやモールなどセットプレーに)時間を割かざる得なかった分、チーム全体のバランス感が若干崩れている」と語る萩井監督。中村も同じことを振り返っていた。組織的な練習は今現在、継続してやっているという。
攻撃面では、ゴール前まで再三攻め込むも、あと一歩が出なかった。ハンドリングエラーやペナルティで押し戻された。後半25分には敵陣5m付近でマイボールスクラムを獲得。アドバンテージをもらい、FB光部(社4)が逆サイドの高野(社3)へキックパスを送ろうと試みるが、落球。その後のアドバンテージでもらったマイボールも落球してしまった。主将・野中は「アタックのところで継続力がないので、攻め方も含めてもっかい考えないといけない」と振り返った。
そして後半終了5分前で反撃に出た。ケガから復帰したFB安田卓が持ち味のキレのいいランニングでビッグゲイン。ゴール前まで詰め寄り、密集から野中がねじ込んでようやく得点。

密集から野中がねじこんでトライを奪った
その数分後、またしてもボールを受けた安田が敵陣奥深くに攻め込み、大外高野に渡ってトライ。「まだコンタクトの部分で気にしてしまっていた部分はあったけれど、ランニングの部分では自分の走りができたかなと思ったので良かった」。あの数分間、同志社は圧巻だった。

復帰戦で躍動した安田

トライを決めた高野
強い同志社。展開ラグビー…。少し懐かしい光景が見られたように思えた。しかし反撃もここまで、ノーサイドを迎えた。
今回の取材では、初めて共通した点が見えた。それは取材に対応してくださった選手・監督がみな同じ課題・同じ手応えを感じていたという事だ。それは特にFWのセットプレーの面。春シーズンの立命大・大東大・京産大・天理大を相手に苦しんできて、明らかに弱点だった部分にこだわって、こだわって合宿を行ってきた。スコアにはまだ出ないが、確実に進化している様子だ。そして安田卓平。彼の美しきランニングが試合の流れを一転させた。FWとBK、それぞれが自分達の「カラー」を定めてきている。
日本一への道路はまだ見えはしないが、少しずつ構築されている。確かな自信を胸に、今年の北海道合宿は幕を閉じた。(只松 憲)
○コメント
萩井監督
セットプレの手応え――。
春シーズンが終わってからも、この合宿を通じて、課題になってた部分で、時間を割いてやってきた。試合の結果的には負けましたが、部分的なスクラム・モールなど弱点とされてきた部分に関してのある程度の手ごたえはあった。そこに時間を割かざる得なかった分、チーム全体のバランス感が若干崩れている。その辺はしっかりと京田辺に帰って、自分たちの強みはなんなのか、自分たちの強みを生かせるように、やっていきたい。残り5週間、いい形で迎えれるようにします。
野中翔平
今日の試合を振り返って――。
ディフェンスの部分で、FWがホットゾーンで受けてるのでそこで乗られて、順目に帰れなくて、ディフェンス余られて、BKは流すディフェンスをして…。そこでまた乗られて、ディフェンスはまた遅れて…の繰り返し。上がれる場面で上がれる選手が少なくて、タックルする瞬間にスピードをあげれてないので、結局そこで受けて乗られてっていうのが全て原因。これだけ点数を取られたのはFWのホットゾーンのところ。
セットプレーからの失点――。
スクラム・ラインアウトに関してはだいぶ手ごたえを感じている。ペナルティを取ったり取られたりというのはあったけれど、確実に積みあがってきている。シーズンまでにもっと強みにできる実感はある。才田さんや北川さんとかスタープレイヤーのフロントが今年はいないので、絶対数的な練習量で埋まってきている。
合宿を振り返って――。
FWはスクラム・ラインアウト。BKはファーストフェイズのところと、タックル。
明治大学戦に向けて――。
アタックのところで継続力がないので、攻め方も含めてもっかい考えないといけない。スクラム・ラインアウトで圧倒して、ディフェンスから流れを作れるようになりたいし、前述した一人目のロータックルとかがあるから同志社の華やかさはあると思うから、泥臭い下積みをしていく。
安田卓平
今日の試合を振り返って――。
合宿でやってきた部分が出せたところもあったんですけれど、なかなk自分たちのラグビーができなくて、後半も筑波に押されてたので悔しい試合ではあった。
FBからどんな声掛けを――。
準備の段階で、セットピースだったりアタックもセットできなくて、自分たちのミスが続いてたのでまずはそこをセットしようという事と、一人一人がしっかり強いプレーしていかないと厳しいと思ったので、自分はそこを心掛けていた。
後半の2トライ――。
まだコンタクトの部分は気にしてしまっていた部分はあったけれど、ランニングの部分では自分の走りができたかなと思ったので良かった。
中村海輝
今日の試合を振り返って――。
スクラムは練習してきていることができてきていると思う。合宿でいろんな大学と組んで、レベルが上がっていることはみんな実感できていると思うので、シーズン入ってまずは関西の大学とスクラム・セットプレーをするのが楽しみというのが個人的な感想。ラインアウト、モールも含めて、しっかり取り組んでいるので継続してやっていきたい。
ディフェンス面での課題――。
組織的な練習は今現在継続してやっている。この前の東海戦で肩が当てれていないとか課題があって、今回はキャプテンを含めてその事も考えてやってた。これで済ませるにはよくないとは思っているけれど、気持ち的な部分も大きい。今日は負けてもいいから、FWはとにかくスクラム・モールと、合宿でこだわってやってきたことをやれと監督もおっしゃっていたので、こだわれたのは良かった。
選手達、自身心境は――。
東海の時も本当に気持ち的な部分が多くて、点差ほど実力で離れていないとみんな実感しているので関西に帰ってしっかり練習したい。